陸軍船舶特攻隊「マル令」

さきの大戦での日本の自爆特攻隊は、航空機や小型潜水艇「回天」が有名だが、わたしのいた陸軍船舶隊にも水上特攻隊「マル令」があった。
「マル令」とは、「司令部伝令艇」という高速ボートを改造し伝令の「令」をマルで囲んだ略称だ。一人乗りの小さな舟艇で、自動車エンジンと爆雷を積み高速で敵艦を攻撃。四国の海岸を走る汽車より早かったが、消音マフラーがなく凌波力が弱いのが弱点だ。
最初、フィリピンで戦果をあげたというが、米軍は音で気づくと木材などを海に落として「マル令」を転覆させた。だから戦争末期は日本の海岸に配置待機した。
その船舶特攻隊は見習士官で編成され、血書で志願した連中は宇品の船舶司令部に移送。むしろいやいやの指名者が訓練を受けていた。夜間攻撃訓練のため、ひるまからサングラスをかけ、最初は敵艦に高速で近寄り爆雷を投下反転する訓練だったのに、まっすぐの突入訓練に変わった。ほとんど実戦に使われず、存在も知られなかったことは幸いだ。
また陸軍にも潜水艦があった。南の島々に残された日本軍へ、海軍潜水艦がひそかに食糧を輸送し、まず海軍兵士のいる海岸に浮上して流す。数の多い陸軍から不満が出て潜水艦を造った。攻撃兵器はなく輸送専門で将校と下士官だけの乗組員。戦争にまけるはずだ。敗戦記念日が近づくとなぜか毎年思い出す。いのちがごみのように扱われた時代を。
「友のために自分の命を捨てること、これ以上に大きな愛はない」(ヨハネ15・13)