2012-01-01から1年間の記事一覧

成熟する日本、成熟した信仰

穀物や果物でも、人間や社会や国家でも、中身が充実して成熟することが大事だ。そしてキリスト信仰も同じ。 2012年もきょうで終わる。この1年、日本は少子高齢化に経済不振で国力も縮んだといわれるが、それでも世界に冠たる経済力を持つ。これからの日本は…

くさいクリスマス

あなたは馬小屋に入ったことがありますか。そこは馬が落とす糞尿の、むっとするくさい臭いがただようところです。ふつう馬小屋には数頭の馬がそれぞれの囲いに入れられ、お尻をこちらに向けて立ち、壁につるされた飼い葉桶の餌を立ったまま食べます。日に3回…

あすのパンを、きょう与えてください

もうすぐ88歳になる老人が、毎週ブログエッセイを書いています。だいたい週に100人ほどが読んでくださっているので、老人でも、居ながら、100人の方に文書伝道ができるわけで、ありがたいことです。このブログは2006年から始め、その年は365日休まずエッセイ…

被害者は痛みを忘れない

国立ハンセン病療養所を見学に来た県立女子高校生一〇数人を、キリスト教会の患者代表が、一列の輪に並ばせ、両手をつながせました。そして「左手の力はまったく抜いてください。そして、わたしが『はい』と声をかけたら、右手で右の人の手を、思いっきり握…

いそちゃんに会う、指先が使えない

11月26日(月)いそちゃんに会ってきた。むかしわたしが「恩寵と真理」というキリスト教雑誌の編集をしていて、その読者をたずねて面会したのが最初だ。もう50年も前。そのころは、いそちゃんも元気で、さっさと歩いていた。当時この国立ハンセン病療養所に…

一点突破、福音のよろこび

徳善義和著「マルティン・ルター」(岩波新書2012年6月刊)によると、ルターは、1511年にヴィッテンベルグ大学の聖書教授に任命され、まず詩篇講義から授業を始めた。テキストはラテン語の詩篇全編を印刷して学生に配り、それに「全詩篇はキリストの詩である…

われ穏やかに老いゆくらしも

「腕の皺さざなみ打ちてひろがればわれ穏やかに老いゆくらしも」(87歳10ヵ月) 朝の目覚めはさわやかで/うんと伸びして起き上がる/洗面の水ここちよい/登校の孫とハイタッチ/朝の運動曲げに曲げ/足裏腹乗せ腹筋50回/正座後倒頭上拍手40回/腕立伏せは60回/腕…

「だのに」と「だから」の法則

むかし、毎年5月1日、茅ヶ崎の五十嵐家に招かれて「五十嵐健治、ぬひ記念会」に交わった。健治翁はクリーニングの白洋舎の創業者。ぬひ様はそれを裏で支えた夫人。5月1日はぬひ夫人の命日だ。 健治・ぬひ夫妻のお子様は、男性6人、女性6人と12人。記念会には…

受身のことば「主に愛されている兄弟たち」

わたしに便りをくださるとき、手紙の書き出しに「主に在って愛する藤尾正人様」でなく、「主に愛される藤尾正人様」と書かれる方がいた。よほど主キリストを教えられた方だろう。「わたしが愛する藤尾」ではない。自分の愛など、ふらふらする愛だと心得てい…

石原東京都知事辞任・右にぶれる日本

2012年10月25日、突然、石原慎太郎・東京都知事(80歳)が辞任を表明。国政復帰をめざし新党の党首になると公言した。これで日本の政治は、さきの自民党総裁に安倍晋三が就いたのとあわせて右へぶれる。 石原慎太郎、人騒がせな人物だ。もちろん都知事として…

一文無し(いちもんなし)

東京中野区白鷺のわが家から、中央線の阿佐ヶ谷駅まで直線距離にすると1500メートル。ぐるぐる小道をまわっても1800メートルくらい。そこを足弱の87歳のじいさん、杖をついてときどき歩く。 きのうも、ぶらぶら20分あまり歩いて阿佐ヶ谷まで来た。家内に頼ま…

韓国の教会 日本の教会

日本のキリスト教会は、だいたい会員が平均100人ほどで、礼拝出席者は50〜60人程度です。無教会も小集会が多い。韓国では100人くらいは教会とはみなされないで伝道所とよばれます。韓国の教会は数千人、いや万を越える大教会がざらです。どうしてでしょう。 …

「いそちゃん」からの手紙

わたしが葉書を出すさい、いつも「返事不要」と書くのに、「いそちゃん」から「郵便書簡」が届いた(9月25日付)。50年近いまじわり。信仰の友、いや信仰の先生だ。 いそちゃんが、こんなながい30行もの便りを書くのはたいへんのはず。彼女は右手首に力がな…

武川村のカンちゃん

カンちゃんこと飯野勘次郎さんは、埼玉県大里郡武川村の農民だ。農民だが政治意識は高く、東方会の中野正剛に私淑し、正剛の東条首相批判講演会のビラまきで警察につかまり即・海軍に召集を受け殴られた。正剛は「戦時宰相論」(朝日新聞1943年元旦)で東条…

パウロの誇り「見て、見て、すごいでしょう」

新共同訳の新約聖書には、「誇る」とか「誇り」ということばが71回も出てくる。そのうち、なんと66回がパウロの手紙だ。あとは「ヤコブの手紙」に4回、「ヘブル人」に1回だ。これでパウロ自身、誇り高い人物だったことがわかる。そのパウロがその誇りをひど…

「いや、英語はたいしたものです」

あるとき、酒枝義旗先生のご自宅の書斎に、数人で集まったさい、ある友人が「先生、彼はドイツ語はできませんよ」と言った。すると酒枝先生は、すかさず「いや、英語はたいしたものです」と答えられた。先生は「出来ない弱点」を突くのでなく「持っている長…

新約聖書を70日で翻訳したマルティン・ルター

夏目漱石が、名作「坊ちゃん」を書いたのは彼が40歳の春だ。明治39(1906)年3月半ばから、わずか15日で書き上げた。これを知って、さすが漱石と驚いたが、かのマルティン・ルターが「新約聖書」をドイツ語に翻訳したのが、たった10週間と読んだとき、たまげ…

風、風合い、風格、霊

新涼の九月になった。この2012年、日本の夏は暑かった。東京でも35度を越えた日はざらだ。「机熱し子規漱石も耐へたらむ」(正人)。そのとき、す〜と風が吹き込むと、その細い流れに、なんともいえぬ涼しさをかんじる。「ああ、風だ」。 日本語には、この風…

「女はバカだ」講演会と「梅ちゃん先生」の母

いま評判のNHKの朝ドラ「梅ちゃん先生」を見ていて思いだしたことがある。 むかし国立国会図書館で、職員研修も担当する企画教養課長だったころ、かつての親しい同僚で、当時立教大学にいた神島二郎教授に職員むけの講演をたのんだ。彼が「日本人の結婚観…

皇居一周ジョギングの始まり

8月7日と9日、白鷺の自宅に新聞社が取材に見えた。7日は「日本経済新聞社」、9日は「東京新聞社」。用件は「皇居一周ジョギング」のことだ。 皇居の周りを走るのが評判になって、歩道が混雑しふつうの歩行者が難儀するほどだという。皇居に近い帝国ホテルが…

平和と経済

わたしは毎日、「憲法九条」の「戦争放棄」の条文を、胸に日本語で、背中に英語で刷り込んだTシャツを着込んで走り回っています。この「憲法九条」がいまの日本の経済力をつちかったし、「ああ、さいわいだ。平和を造り出す人々」と叫ばれたイエスのみここ…

「鼻がないアニメ」と「脱原発」

テレビをつけると、かわいいアニメキャラクターが歌っている。その顔に大きな「目」と「口」はあるが「鼻がない」。いや、あるのもあるが、ごく小さい。 むかし十二使徒群像を彫ったとき、12人の顔に苦心した。顔は目と鼻と口でできている。しかも鼻は、顔の…

国会議事堂中央食堂でめしを食う会

日本の国立国会図書館を英語で書くと<National Diet Library>になる。いまオリンピックをやっている英国の議会は<Parliament、パアーラメント>、米国や中南米は<Congress、コングレス>というのに、日本は、スエーデン、デンマークと同じく、国会をくDi…

妻と歌う朝の讃美歌

かれこれ一〇年も前から、毎朝食前に「讃美歌」(日本基督教団刊)の中の、わたしが歌える歌を番号順に選び、妻と声をあわせて歌います。そのあと彼女が聖句を読み、わたしが祈ります。わたしは欄外に歌った年月日と、ときにはその日の事件や、家族の出入り…

韓国の「ムグンファ」と日本の「ムクゲ」(槿)

ことしも庭の槿が咲きました。花は下から咲いてゆき、一日でしぼみます。 「無窮花と隣国でよぶ白き花 槿と咲きぬ日本の庭に」(正人) 桜の花が日本の象徴のように、ムグンファ(無窮花・槿)は韓国の国花です。硬貨にも彫られ、韓国の特急列車や通信衛星の…

逝くものは斯くの如きか

さきごろ、論語の「逝(ゆ)くものは斯(かく)の如(ごと)きか、昼夜を舎(お)かず」ということばを教えられた。孔子さまが、どこかの大きな河のほとりで残された感慨だという。 「その通り」と、わたしも思った。この2012年5月末からの40日あまりに、5人…

小沢一郎のマニフェスト、キリストのマニフェスト

6日前の2012年6月26日、民主党の小沢一郎とそのグループが、衆議院で消費税導入法案採決に反対しました。前の選挙でマニフェスト(選挙公約)に掲げた原則とはちがうという主張です。しかしそのマニフェストは、万年野党時代に「政権を奪取すれば実行する」と…

佐藤陽二さんのこと

2012年5月30日、佐藤陽二さんが天に召された。彼は晩年、カリフォルニア神学大学院日本校総長とか、外国のなんとか大学の博士号をいくつもぶらさげ、きらきらしたものを身につけたが、わたしは、みなに「陽二さん」と親しまれていたころの彼が好きだ。 彼と…

中崎妙子さんの尊厳死

2012年6月8日、金曜日のひるさがり。東京築地の聖路加国際病院10階の、ホスピス病棟1065号室には、明るい日差しが射しこみ、まっ白いベッドで、まっ白いシーツにつつまれた中崎妙子さんが、白い顔を上向きに横たわっていました。 「母の終わりも近い。最期の…

「覆(おお)う」と「暴(あば)く」

建築基準法がかわって、むかしは建てられなかった木造3階建ての建売りが、わが家の南の道むこうに3軒できた。いずれも「庇(ひさし)」が短い。ご近所でも、古くからある家は庇が長い。中には青銅の庇を長く屋根の下から張り出している。庇が短いと太陽がも…