はたちの正月

今日は「成人の日」。二十歳の女性たちが華やかな和服を着ている姿は平和ないい眺めだ。
わたしの二十歳の正月は戦争のさなか、帝国陸軍にいて駆けだしのクリスチャン。
中尉の区隊長から「右の頬を打たれなば、左の頬をも向けよ」の聖書を持ち出され、「こんなことで、戦争ができると思うか!」と怒鳴られた。わたしは「そんなことが、すらすらできるようなら、キリストは十字架で死ぬ必要はなかったのであります」と答えた。洗礼のとき浅田正吉先生が教えてくださった言葉どおりに。
まさに聖霊の助けであった。教会も、牧師も、信仰の友もなく、聖書を持っていることがわかり「送り返せ」と命じられた。しかしキリストが共にいられた。
その夏「遺言を書け」との命令が部隊に届いた。わたしは、ためらわず覚えていた聖書の一節を書いた。この一句が死を前にしたわたしに、決然たる勇気をあたえつづけてくれたからだ。二十歳の戦友たちも蝉時雨のなか懸命に遺言を書いていた。
「なんぢ死に至るまで忠実なれ。さらば我なんぢに命の冠を与へん」(ヨハネ黙示録 2・10)