壮健さん

52年前、ハンセン病の長島愛生園をたずねた時、島にあった高校の教師オカノ・ユキオ君から、患者の高校生の将来最高の望みは、会社の社長でも、政治家でもなく、患者自治会委員長だと聞いた。当時患者は島を出られなかった。
また島で「壮健さん」ということばを聞いた。「壮健」はふつう元気な状態を指すが、島で「壮健さん」という時、ハンセン病以外の人全部を意味すると知って驚いた。たといガン患者でも結核患者でも、行動の自由がある人は「壮健さん」なのだ。自由を奪われれると人はそれに憧れ苦しみもがく。それが「壮健さん」の一語にこめられている。まして人間の魂が罪に囚(とら)われる時、人は罪からの解放を求めて深くうめく。
岡山県の長島には、いま狭い水道に橋が架けられ、島からまた本土から自由に行き来できる。もちろん患者さんも。全国の国立療養所にただ一つあった高校も、患者の高齢化とともに廃止され、「壮健さん」も死語となった。
「この自由を得させるために、キリストはわたしたちを解放してくださった」(ガラテヤ5・1)