「福は〜内!」「エスは〜内!」

テレビで今年も、成田山からの豆まきを放送している。
少年の日、豆まきの夜はかすりの着物で走りまくった。豆をまく大きな旅館や、呉服屋の前へ走るのだ。たいてい二階の手すりからまく。すぐかすりの羽織を脱ぎ、前で両手を袖に通す。こうして羽織の両端をつかめば、羽織が大きな風呂敷になって豆を集めやすい。だれ言うとなく仲間の少年、少女はみなそうしていた。時には小銭も飛んできた。
「福は〜内!」「鬼は〜外!」と叫んだところで、その家に幸福がくるわけでないことは、百も承知でつづけている日本の年中行事だ。成田山では高く挙げた両手で、飛んでくる豆をつかもうとする。背広を脱げ!と教えたいくらい。
有名な泰西名画に、キリストが戸の外に立ってノックしているのがある。画家の高い信仰理解がしめされて、そのドアには外からの取っ手がない。ノックの音を聞いて、内からドアをひらけと教えた絵だ。イエスを内に迎えた時「福は〜内!」になる。「エスは〜内!」。
「見よ、わたしは戸口に立ってたたいている」(黙示録3・20)