関口隆克先生

shirasagikara2006-02-09

髪で思い出すのは関口隆克先生。最初わたしの頭を先生がバリカンで刈った。先生は朝、ひげのかみそりで頭の後ろの毛も切りパッパッと払っておわり。後ろはぎざぎざ。
愉快な方で、毎日しゃべっても一年間同じ話がないほど話題が豊富でおもしろい。わたしはあきれて「せきを切り口よりあふるこわ高のおしゃべり一人勝手にしろい」と、「せきくちたかかつ」を詠みこんだ歌を作り、「関口隆克先生還暦記念文藻」を編集。
ある時、鶴見俊輔が書いた「日本の名家」という本を見せられた。巻頭の口絵は関口一家。前列中央には、あの「広辞苑」編さんの新村出。先生の父上の弟だ。ノーベル賞朝永振一郎を始めきら星の群像。その端に関口家棟梁の先生が、チンドン屋のふん装で立っている。
「藤尾君、名家って言ったって、たいしたこたあねえんだ。変なのもいるさ。ここへ出さねえだけだ。だからわざとチンドン屋になってやった」。
先生が学生時代、中原中也が押しかけで同居し「羊の歌」に「関口隆克に捧ぐ」の詩を残した。先生はクリスチャンではなかったが、じつに福音的な生き方をされた。
「あなたは、神の国から遠くない」(マルコ12・34)
(関口隆克 1904−1987 文部省大臣秘書課長、局長をへて国立教育研究所長 国立国会図書館専門調査員 開成学園中学・高校校長)