席をゆずる

白髪(しらが)頭でステッキを突き電車に乗ると、たいてい若者が席をゆずってくれる。わたしは感謝して座り、降りるときその方に必ず声をかけて挨拶する。
きのうも電車に母娘が座っていて、娘はわたしを見ると、にっこり笑って立ち上がった。日本も捨てたものではない。
つぎに乗ったバスは優先席が一つ空いていた。右に座っていた女性は、もっと年寄りの女性が乗り込んできたとき、さっと席をゆずった。またまた男性の年寄りが入ってきた。人垣でだれがどうしたかは見えなかったが、がやがや笑い声がしてその男性が座るのが見えた。
「小さな親切運動」というのがあったが、小さな親切でも、それをした方はやはり心足りているはず。席をゆずられた老人が「けっこうです」と足を踏ん張る姿は、ゆずった方を軽く失望させ、気まずい空気が残る。
「惜しみなく愛を与える者はさいわいだ。しかし愛をよろこび受ける者はさらに偉大だ」という。素直に小さい親切でも受ける心も大事だ。
「感謝して受けるならば、何一つ捨てるものはない」(第1テモテ4・4)