般若心経と歎異抄

「般若心経」がブームという。分かりやすい自由訳も出て本屋の店頭にならぶ。262文字のこの経典は、204文字のキリスト教の「使徒信条」と共に信仰のエッセンスだ。
わたしも「ぎゃてー、ぎゃてー、はらぎゃてー、はらそうーぎゃてー、ぼうじそわか」と丸ごと暗誦できたときはうれしかった。「空即是色」の意味はよくつかめぬまま。
しかし仏教経典なら、やはり日本人の書いた「歎異抄」が好き。親鸞唯円の「弥陀の本願を信じて念仏成仏」の信仰は、キリストの福音に近い。
酒枝義旗先生がドイツ留学の帰途、あの神学者カール・バルトをたずねた。1936年のころだ。そのとき「歎異抄」の「善人なをもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」の説明をしたところ、バルトはテーブルを叩いて「それこそ福音だ」と言ったという。
歎異抄」に「本願ぼこり」という一節がある。キリスト教でいえば「キリスト誇り」だ。この深い信仰の消息を、福音を知らずに700年も前に教えた日本人がいたとは!
「誇る者は主を誇れ」(第1コリント1・31)