満を持して

shirasagikara2006-02-21

「わたしは二月が好き」とある女流歌人が言った。歌詠みは自然の気配に敏感だ。花がいっせいに開く三月より、満を持して木の芽がふくらみ始める二月に、時の動きを鋭く感じるのだろう。
庭の梅は枝のすみずみまで今に咲くぞとつぼみを並べ、福寿草は黄色い頭をもたげ、椿ももっこり蕾がふくらむ。どの木々もよく見るとしっかり若芽が芽吹いている。
人生にも冬があり春がある。しかし大事なことは、きびしい冬の時代に力を蓄えることだ。この満を持して待つ冬があって、春夏秋に花が咲き乱れる。
トリノでオリンピックが始まりすでに10日。満を持して日本選手団は乗り込んだが、期待に反し成績は不振でまだ花が咲かない。「失格」「予選敗退」「7位入賞」などの悲鳴に近い活字が新聞に躍る。それでいいのだ。人生でも連戦連勝はよくない。
エスも弟子の裏切り・離反・十字架と大事な場面で敗北の連続だった。しかし満を持したイエスの復活の力が、その敗北を全世界の救いの大勝利にひっくり返したのだ。
「ちりに口をつけよ、望みが見いだせるかもしれない」(哀歌3・29)