山奥の泉でキリストと出会う

尾前(おまえ)セキさんがイエスさまに出会ったのは今から70年も前のこと。
兵庫県宍粟(しそう)郡の山奥そだちのセキさんは、娘のころ姫路の紡績工場で働いた。そのころキリスト教の伝道集会に出てキリストを信じたという。しかし病気になり帰郷。少しよくなり炭焼きの夫と結婚した。いちど山に入ると兵庫県から鳥取県にかけてわたり歩く。
主人は炭焼き、自分は炊事や洗濯や下働き。子どもは実家の母にあずけての日々。しかしいつも子どもが気がかりだった。
そんなある日、だれ一人いない山の上の泉のほとりで、「どうぞイエスさま、子どもが弱いですから、お助けください」と祈りつづけた。そしてふと目をあけると衣のすそが見え、ずうっと上を見るとイエスさまのような方が立っていられた。びっくりして、ぱっとひれ伏し「イエスさま、ありがとうございます。ありがとうございます」と、涙にくれた。
宍粟郡波賀町日見谷集落での集会で、セキさんはその話を二、三度した。元町長の岸根寛次良さんは「セキさんの揺るがぬ信仰の原点はあのキリストとの出会い」と言われた。
「あなたのはしための子をお救いください」(詩篇86・16)