サクラ前線 雄大な日本列島

日本の周りには、西に中国、北にロシア、東には海をへだてて米国やカナダ、南には豪州がひかえ、いずれも領土の広い大国なので、日本人は、日本自身を小さな島国と思いがちですが、世界を見わたせば、けっして小国ではありません。日本の北海道はオランダの倍を越える広さがあります。デンマークは九州と山口県ほどの面積です。
日本は太平洋へ弓なりにふたつ、日本列島と琉球列島を張り出しています。その北の端・北海道の宗谷岬の北緯四五度三〇分を、地図の上で東に引っぱると、米国東海岸の北の端・メイン州に行きつきます。日本の西南端・沖縄与那国島の、北緯二四度二七分を東に引っ張ると、米国フロリダ半島の南と同じ緯度です。 つまり日本列島の北から南までの緯度は、米国東海岸をすっぽりカバーしているのです。こんな長大な国はヨーロッパにはありません。ノルウエーの中部からオランダ、フランス、スペインをひとまたぎにする長さです。
見方を変えれば日本は雄大な国なのです。北海道では雪が降っているのに、沖縄では海で泳いでいます。四季の変化に富み「季語」を大事にする俳句がうまれました。「サクラ前線」も三〇〇〇キロの長大な列島を、つぎつぎ桜が咲きついで北上する日本ならではのことばです。中国南端の香港から北京をへて東北部のハルビンまでの距離になります。
韓国の学者が「縮み志向の日本人」を書き、大きなものを小さくするのが得意な日本人の特性を見事に指摘しました。
しかし同時に日本人は、四〇〇年も前の大航海時代に、九州のカトリック大名が「天正少年遣欧使節」を、西廻りのアフリカの喜望峰経由でローマに送り、仙台の伊達政宗は「支倉常長慶長使節」を、太平洋を越えメキシコや大西洋を渡らせ、東廻りでバチカンローマ教皇に派遣する、雄大な試みをする日本人でもあります。日本人は縮んでいるだけではないのです。 「世界一」の大きなことも大好きな日本を見落とせば片手落ちでしょう。「海に沿った多くの国々は喜べ」(詩篇97・1)