バルラハの彫刻

shirasagikara2006-05-11

上野の東京芸大「大学美術館」へ、ドイツの劇作家・彫刻家「エルンスト・バルラハ」(1870−1938)展を見に行った。
会場には彼の版画なども多かったが彫刻だけを見てまわった。小品が多く、わたしが彫っている「十二使徒群像」と顔の大きさも近い。なるほどと教えられることばかり。
船越圭の無機質な彫刻でもなく、リーメンシュナイダーの華麗で細部へのこだわりが深い彫りでもなく、荒いのみのあとが残るシンプルな安定感に驚く。
「剣を持つ天使」や「揺れ動く父なる神」のような、宗教的なものもあれば、ロシアの乞食や農夫、笑ったり、怒ったり、読書したり、人間を自由に楽しく彫っている。
離れがたかったのは「再会」の題の立像。だれとの「再会」か見る人による。小塩節は「イエスとトマス」と見る。復活のイエスの肩に両手をかけたトマスが、腰をかがめて下からイエスを見つめ、上からイエスが目を見ひらいて見下ろす構図だ。イエスがトマスを支える右手にはたしかに釘跡らしきものもある。
芸術作品はその作者の内面をうつしだす。バルラハが後年ユダヤ系の疑いをもたれ、ナチ政権下で苦悩し神に訴える作品を残したが、多く失われたという。
上野の森は巨木が多い。森なかの国際子ども図書館の庭でゆっくりお茶を飲んだ。
「信じない者ではなく、信じる者になりなさい」(ヨハネ20・27)