フロイスの「日本覚書」

いまNHKで放映中の大河ドラマ功名が辻」に出てくる岐阜城安土城に登った宣教師がいました。その名はルイス・フロイス織田信長の寵愛をうけたイエズス会ポルトガル人(一五三二−一五九七)です。
彼はイエズス会総長から、日本でのイエズス会の活動記録を残す文筆活動を命じられ、「日本史」をまとめました。さらに「日本覚書」も残し、欧州と日本の比較を書いています(中公新書七〇七)。面白いので少し抜書きしましょう。
(欧州男性)顔の刀傷は醜悪。(日本男性)顔の刀傷を誇る。(欧州男性)衣服は裏地より表をよくする。(日本男性)良いほうを下にする。特に貴人は裏地を衣服より上等にする。(欧州男性)喪に黒色を用いる。(日本男性)白色を使う。(欧男性州)剣は片手で使う。(日本男性)重いので両手で扱う。(欧州)からだは家で洗う。(日本)男女も仏僧も公衆浴場で入浴する。
(欧州の女性)整った眉を誇る。(日本女性)一本も残さず毛抜きで抜く。(欧州の女性)大きい目を美しいとする。(日本女性)大きい目にはぞっとする。(欧州の女性)歯を白くする。(日本女性)鉄と酢で黒くする。(欧州の女性)夫婦財産は共有。(日本女性)各自所有し妻が夫に高利で貸す。(欧州)離婚は罪悪。(日本)離婚は自由、女性は名誉も再婚資格も失わない。(欧州の女性)多く文字が書けない。(日本女性)貴婦人で書けなければ恥。
(欧州の子供)四歳で手で食べられない。(日本の子供)三歳で箸で食べる。(欧州の子供)読み書きは世俗の教師につく。(日本の子供)僧侶に習う。(欧州の子供)青年でも口上を言えない。(日本の子供)一〇歳でも五〇歳の賢明と判断力あり。(欧州の子供)二〇歳でも帯剣しない。(日本の子供)少年でも刀と脇差。(欧州の子供)演劇でためらう。(日本の子供)のびのびと優雅で堂々。
フロイスは率直に日本の風俗伝統を評価し、「日本史」ではぞくぞくとキリスト教に改宗する日本人の姿に驚いています。 彼は最後に「二六聖人殉教記録」を残して長崎で天にめされます。六五歳でした。人生の最良の部分を日本にささげ、大きな足跡をのこした宣教師でした。「あなたがたは行って、すべての民をわたしの弟子にしなさい」(マタイ28・19)