「愛」「アガペー」の像

shirasagikara2006-06-25

東京駅丸の内側の、天皇が出入りする、駅正面真ん中のまん前に、大きく両手をひろげ、服をはぎとられた半裸の日本兵の像が立つ(いま工事中だが台座の下まで入れる)。
台座の石には、ただ一字日本語で「愛」と彫られ、その下に「η αγαπη」(へ アガペー)とギリシア語の小文字を刻む。前から気になっていた像だ。そのわけを、キリスト教待晨集会の大里喜美子さんに教えていただいた。
その四角い石の台座の上には、2㍍を越す円筒形の台が立ち、その上さらに3㍍のブロンズ像がそびえる。その像は、フィリピンで戦争犯罪人として処刑された、千人余の日本兵の遺族たちが建てたものだ。それがなぜ「愛」「アガペー」なのか。
そのモデルはカトリック信者。彼は無実の罪で死刑判決をうけた。日本にいた婚約者の必死の運動が実をむすび、フィリピンのカトリック教会を動かし、司法当局も承認して、彼は釈放されることとなった。
ところが、彼は「自分が死んで、フィリピンの人々の日本への恨みを、わずかでも消せるなら」と、釈放を拒み処刑された。アガペーの像はみずからすすんで償いの死を遂げた青年の記念碑でもある。こんな青年がいた。説明は一切ない。それがすがすがしい。
「命には命、目には目、歯には歯をもって償わなければならない」(出エジプト21・24)