白井きく先生とギリシア語

白井きく先生がわが家に同居されたのは、1951年から57年までの6年間だ。
じつは国立国会図書館の同僚だった清水望君が、白井先生からギリシア語を習うが、君も来ないかと誘ってくれた。先生との最初の出会い。大野忠さんと三人で教わった。
1949年春のことで「Huddilston;Essentials of New Testament Greek」を教科書に、アルファ、ベータから習った。洋書の輸入が限られ、辞書がなく、Souter の「Pocket Lexicon to the Greek New Testament」が手に入ったのは翌1950年の秋。
そのうち、清水、大野君らは、丸の内の塚本虎二先生の集会で戦後再開された「ギリシア語講座」に移った。わたしは酒枝義旗集会だからだめと斉藤茂先生に断られた。
白井先生は気の毒がり、わたし一人に教えてくださった。それがよかった。塚本門下の秀才が多いコースだと、たぶんわたしは脱落したにちがいない。それが個人教授のおかげで脱落もできない。
ところが白井、清水、大野さんらがいた旗の台の建物に、住めない事情がおこり、清水君は国立へ、大野君も移転。ちょうど1951年、軽井沢の別荘を売り白鷺に一軒家を構えたところだったので、白井先生にわが家に同居していただいた。これがまたよかった。
「神のなさることは、みなその時にかなって美しい」(伝道の書3・11)