副議長も机もおなじこと

あさ出勤すると、いきなり衆議院副議長の秘書から10時に部屋へ来るように。聞きたいことは「仏教」との電話。40年まえだ。
当時わたしは国立国会図書館調査局文教課長。キリスト教ならいくらかわかるが、仏教には参った。そこで先輩同僚のS政治行政課長に同行を頼んだ。彼は仏教の造詣が深く、サンスクリット(古代インド語)もできる。
副議長とは大きな机をはさんで対面。法学博士でもある副議長は矢継ぎばやな質問。「オシャカ様はいつごろの人」「その教えの要点」「日本へ仏教が伝わったのは」「当時の日本は」「主なお経は」といった質問は、わたしが何とか答えた。
しかし「どのお経が一番か」の問いに、S課長が「法華経です」と即答。そこからかなり専門的なやり取り。最後に「般若心経」の話。副議長が「色即是空の核心は」。S課長「はい、要点は三つ」「いや、一つにしてくれ」「では申します。副議長もこの机も同じということです」。オヨヨ。
そのあと副議長はやっと本音を吐いた。「あす大きな仏教教団の大伽藍落慶式に、自民党を代表して祝辞をのべる。ふたりで聞いてくれ」と、部屋を歩きながら演説。
数学を究めた人は、その苦心を知っているから、ほかの分野の研究者を尊敬する。キリスト教徒も、仏教やイスラームを深く知らないが、その信仰を尊重する。それでいい。
「愛をもって心から尊敬しなさい。互いに平和に過ごしなさい」(第1テサロニケ5・13)