「新宿」「信じゆく」

東京・山手線の駅名を茶化した呼びかたがある。「原宿」→(腹すく)。「渋谷」→(渋茶)。「恵比寿」→(エビス・ビール)。「目黒」→(まぐろ)。「五反田」→(ごはんだ)。「大崎」→(お〜酒)。「品川」→(品切れ)。だれが考えたか、うまい。
「腹はスキヤ橋、目は丸の内」とか、「かんだ、かじ町、かどの、かんぶつ屋で、かち栗、かったら、かたくて、かめない、かえして、かえろう」なんていう早口言葉もある。これは江戸の神田・鍛冶町を。「恐れ入谷の鬼子母神」は入谷を。「うそを築地の御門跡」は築地を読み込む。みな言葉あそびだ。
むかしの人も、けっこう忙しかったと思うが、言葉であそぶ余裕があった。車のハンドルでも「あそび」がないと、運転できない。人生もおなじ。
きのう、きょう、JRの新宿駅を電車で通った。ドアがひらくと、プラットフォームに、大きな「 新 宿 」の案内板が見え、下に、ひらがなで「しんじゅく」と書いてある。柱には、タテに「しんじゅく」と出ている。
わたしの父は、この「しんじゅく」をじっと見て、「信じゆく」と読んだ。そしてうれしくなり、それ以後、雑踏の新宿も好きになったという。いかにも単純な父らしい。きのう、きょう、その新宿を通ると、父の「信じゆく」を思い出す。
「信じる者は、決して失望することはない」(第1ペトロ2・6)