いじめに強かった日本人

校長に大声で怒鳴られつづけ自殺した教員。いじめを苦に遺書を残し自殺した中学生、小学生。少子化でどの家の子も大事な「ぼっちゃん」「嬢ちゃん」になり、日本人はいじめに敏感になっている。
むかし武士は町人をいじめ、上級武士の子は下級武士の子をいじめた。しかし坂本竜馬や、西郷隆盛大久保利通ら下級士族は、いじめをバネに徳川封建制をひっくりかえし、福沢諭吉も「門閥制度は親の敵」と呼んだ。つまりいじめにくじけてはいない。
明治になり小僧、丁稚、子守たちは、上司の手代にいじめられ、明治時代の自殺統計は少年少女が多い。軍隊でも下級兵士が新兵をいじめた。しかし「おしん」で分かるように、いじめがふつうの世の中で、殴られて苦にもしない、いじめに強い日本人でもあった。
聖書のむかしから、ファリサイ派は、税金集めの職業人をいじめ、信仰熱心でない連中を「地の民」とよんでいじめた。じつはこの「いじめられた人々」が、まっさきにイエスの福音を受け入れ、人生を変え、いじめに負けぬ柔らかくて強い信仰を育てた。
いじめは強者が弱者に加える陰湿な暴力だ。よくない。しかし強者と弱者がいるかぎりなくならないだろう。だから、いじめをバネに、歴史や人生をひっくり返す強さを育てたい。
「踏みつけられてじっとがまんしている人はさいわいだ。御国を相続するのはその人たちだから」(マタイ5・5/塚本訳)