一木彫り仏像と12使徒像

上野の国立博物館へ「仏像展」を見にでかけた。すべて木彫の146体。うち45体の奈良・平安時代の仏像は、国宝4体をふくめ重要文化財。日本各地の寺院から集め、照明をあて、後ろにも廻れるし、薄暗い本堂でみるより間近に見られ、日本の彫刻もギリシアや西欧に負けない迫力があると感じた。特に一本の巨木から彫り出す、日本ならではの「一木彫」の作品群には圧倒された。
しかも仏像だから信仰の対象だ。制作者の信仰がノミの一打一打で像にこもる。顔には気品、体躯は堂々。それに衣のひだや指の流れの細部のこだわりがすごい。一つの顔に鼻筋が三本、口が三つ、目が四つの「宝誌和尚立像」には度肝を抜かれたが、これまた霊性が高い作品。
江戸時代の円空、木喰(もくじき)の対照的な70点がいい。円空の荒々しいノミのあと。木喰のふくよかな笑う仏像。円空の作品群は江戸時代のピカソ。ふたりとも驚く早さで木を削った。円空は、木を切り翌日祈祷、翌日彫刻、翌日開眼と一日で彫る天才。円空、木喰の十二神将像の喜怒哀楽像が面白い。12使徒群像を彫っているので驚嘆しながら見た。
わたしは信仰の対象のキリストは彫れないし彫らない。名もなきガリラヤの無学の12人の凡人が、イエスの弟子にされ、すべて苦難の道を歩いたという、その内面が彫れたらいい。
「ペトロとヨハネの大胆な態度を見、しかも二人が無学な普通の人であることを知って驚き」(使徒3・13)