ローマの信徒への手紙16章

パウロは、まだ見ぬローマの信徒へ長い手紙を書いた。日本語聖書で25ページ。全部読むのに75分はかかる。
それを女性信者フェべがコリントから運んだ。紀元57年のころだ。ローマの信徒はその手紙を読んだのではない。まず聞いたのだ。最初はフェべがゆっくり読んだはずだ。教会といっても会堂があるわけでなし、夜いつとはなしに、人々は大きな信者の家に集まった。奴隷も多かったから、夜でなければ来れないし、手ぶらできて愛餐を楽しんだ。
にぶい光の集会で、フェベが手紙の書き出しの「パウロ・奴隷]<Παυλοs δουλοs>(1・1)と読み始めたとき、会衆に多かった奴隷たちはどよめいたに違いない。また最後(今の16章)に、27人の中核信徒の名前が読み上げられ、自分の名前を耳にして、どれほど驚いたことか。しかも27人中14人が奴隷だという。
こんな長い手紙、それも聖書の白眉の文献を書くパウロに驚くが、その彼が行ったこともないローマの信徒、しかも奴隷の名前まで知り尽くしているのに、もっと驚く。
その上パウロは、「愛する」「苦労した」「主に結ばれた」「仕えた」と、美しい肩書きをつける。人は自分をプラスに評価してくれる相手を喜ぶ。パウロ神学者、伝道者でありつつすごい牧会の名手。いやはや、まいった。 
「主のために苦労して働いているトリファイナとトリフォサによろしく」(ローマ16・12 )