「点と線」 列車運行の几帳面さとおおらかさ

11月最後の土日に、松本清張「点と線」をテレビで観た。こんなミステリが成り立つのは、鉄道網が発達し、しかも分秒刻みの正確さで列車が運行される日本ならではの話だ。
心中とかたづけられた事件を、他殺ではないかと、主役のビート・たけしが解いてゆく。その決め手は、41分間も東京駅15番線ホームに停車する博多行特急列車を、13番線ホームから見られるのは、たった4分間と気づいたときだ。それほど東京駅にはつぎつぎ電車が出入りする。
むかしNYから特急列車でフィラデルフィアへ行ったが、出迎えの牧師が来ない。あたふたと駆けつけた牧師は「列車が定刻に着くとは」と驚くのに驚いた。その列車は、ボストン=ワシントン間を走る米国東海岸の大幹線。日本の東海道線みたいなもの。それが定刻に着かないとは。
日本に帰り東海道新幹線を名古屋で下車するとき、3、4人の外国人が入り口通路に立ち、列車がホームにすべりこむさい、みな腕時計を見ながら「five」「four」「three」「two」「zero!」と叫んだ。日本の列車運行の秒単位の正確さへの驚きの声だ。
しかし、その分秒を刻む過密ダイヤが、2005年の宝塚線電車転覆事故を生んだ。米国流の列車運行のおおらかさ。日本流の几帳面さ。どちらにも長短はある。
ではイエスはどうか。山上の説教で「律法の一点一画も消えない」と言う几帳面さと、「明日のことまで思い悩むな」と教えるおおらかさを兼ねるお方だ。このバランスがいい。
「明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である」(マタイ6・34)