街の小さな豆腐屋、電器屋、ハム屋さん

白鷺郵便局となりの角の豆腐屋さん。看板もない小さな店。主人と目があうと「木綿一丁」と言ってしまう。「ヘエイ」と、ダンナは深い水槽の底から豆腐をすくう。その製品に誇りを持っている。大豆やにがりにこだわり、スーパーの豆腐と味が違うと胸を張る。夫婦でこまめに働く。それに店に来る客より学校給食への仕出しで忙しいらしい。
阿佐谷北6丁目の電器屋さん。親の代からわが家に出入りする間口3メートルの小店。冷蔵庫、洗濯機を始め、ほとんどの電器製品はその店で買う。二代目夫婦も働き者。それに新しい器具の知識も技術もたしかだ。その店にほとんど客の姿を見ないが、わが家と同様、来客でなく、長年のお得意がたくさんあるのでつぶれないのだ。
阿佐谷のハム屋さん。南口アーケード街の中ではくすんだ店。しかしドイツ・ハンブルグの、ハム・オリンピックで金賞を受賞。それを宣伝しない。金賞を取ったハムの小さな値段票に細く書いている。だから通行客でなく高級レストランの注文で忙しいらしい。味を知った常連客が立ち寄ると、荘重な風貌の主人がハムを切ってくれる。
これら三つのぱっとしない小店。みな誠実で腕自慢。宣伝下手。しかし背後に小店を支える大きなかたまりがある。つぶれそうで大丈夫。堕落「吉兆」などとは品格が違う。
日本のキリスト教。「太陽別冊・日本の教会をたずねて」(1/02年.2/04年)を見ると、りっぱな会堂もかなりあるが、大多数は間口も狭い小教会だ。しかし後ろのキリストのかたまりはデカイ。宣伝下手だがキリスト自慢。救いの自信は磐石。大建築や会員数を誇る教会より、よほどまし。
「小さな群れよ、恐れるな。あなたがたの父は喜んで神の国をくださる」(ルカ12・32)