糟谷さんの「白血球と人格」

糟谷伊佐久さんのことを先週書いた。糟谷さんの父君は海軍軍医。両親とも篤信のキリスト者。糟谷さんが医者を志し結核専門医を目指したのは、29歳で結核のため天に召された母上の仇討ちの気持ちもあったという。
糟谷さんが聖路加国際病院の内科医だった1938年2月20日。白血球と心身医学を結びつける光の洪水のような啓示を受けた。その発想を、数十ページのノートに、ドイツ語やヘモグラムが飛び交うものすごい走り書きをした。その夜、糟谷さんは信仰の友に電話した。友人はその興奮に驚き、羽織袴でかけつけ「研究が完成したらノーベル賞かね」と聞くと「ノーベル賞以上だよ」と答えたという。彼は結核末期患者がキリストを信じ平安を得ると、白血球の数値が劇的に変わることに気づき、黙示録の七つの教会からヒントを得て、彼独自のダイヤグラムを作り出した。
以後35年の研究の成果を、糟谷さんはまず外国の研究者に読んでもらおうと、英文にまとめた。わたしはオックスフォード大学出版局東京支社に評価を依頼。その責任者が糟谷さんの教え子で便宜を図ってくれたが、実験症例数が少ないと英国から原稿を返された。
そこで、関係者が協力して出したのが「Isaku Kasuya, Leucocyte and Personality. an Introduction to Micro-Constitutional Psychology」(Doshinsya Press、A5・188p・1974)だ。またヨルダン社から「白血球と人格ー極ヘモグラムによる人格探求の理論と実際」(B6・245p・1976)も出た。わたしは国立国会図書館が世界の図書館と資料交換するルートに乗せてもらい、英文版をばらまいたが反響は返ってこなかった。糟谷さんの人格医学の先駆的研究の真価は、なお時が必要なのかも知れない。(糟谷伊佐久・1904-1981、77歳)
「栄光の源である御父が、あなたがたに知恵と啓示との霊を与え、神を深く知ることができるように」(エペソ1・17)