母の日 おかあさんと いっしょ

shirasagikara2008-05-11

むかし おかあさんと いっしょに 汽車に乗った
すぐ乗り物に酔うわたしに
おかあさんは 窓のそとの たんぼに立つ「仁丹」の広告を
「いくつ あ〜るか」「それ ひと〜つ」「ふた〜つ」「ほら みっつ」
わたしも 窓にしがみつき 「なな〜つ」「やっつ」
わたしは おかあさんのたもとのキレー紙をもらい はしをほそくちぎる
ちぎりきらずに またはしをちぎると ながい吹き流しになった
はしをつまんで 汽車の窓から手を出すと 紙は はたはたなびいた
そのうち ちぎれて とんでった
むかし おかあさんと いっしょに 渡し舟に乗った
船頭が ながい竹さおで ぐっと 舟を押しだす
わたしは おかあさんのたもとの ハンカチをかりた
ハンカチのはしをつまんで 川にひたすと 水に ゆらゆらゆれる
舟からあがると おかあさんの おかあさんが ひろい河原で待っていた
むかし おかあさんに 手をにぎられて 夜道をあるいた
だれかが「どちらへ」 「はい お集まりに」「キリスト教のお集まり」
まっくらな 闇のむこうに あかるい電灯の 大きな窓が待っていた
そのおかあさんは いま105歳と9か月 こんこんとねむる 08年5月の母の日
<「母の日はこれが最後」と言ひつつも三とせは過ぎぬ百五の母は>
「その信仰は、まずあなたの祖母ロイスと母エウニケに宿りました」(第2テモテ1・5)