虫けらのように殺されて

7月27日(日)、NHKが「兵士たちの戦争・ガダルカナル」を放映した。1942年、南太平洋のソロモン諸島ガダルカナルでの日米最初の地上戦だ。
憤りを覚えるのは、参謀本部の高級将校も前線の指揮官も、ジャングル戦の過酷さを知らず、地図ひとつなく、米軍の1万5000の兵力を、5000と過小に侮り、米軍の火力に惨敗し、戦死、餓死の日本兵は、上陸した5000人の70%に達したことだ。日本軍の戦法は日露戦争以来の一対一の白兵戦だった。兵士を虫けらのように殺したこの<敗北>を、大本営は「任務完了シ<転進>」とウソの発表をし、真珠湾の勝利から、わずか半年あまりの、日本の敗北の始まりだった。
敗戦まえ、ほとんど知られていないが、こんな「斬り込み隊」の歌があった。「いのちひとつとかけがえに百人千人斬ってやる 日本刀と銃剣の切れ味知れと敵陣深く きょうもまたゆく斬り込み隊」。日本軍は、ガダルカナルの轍を踏みつづけたのだ。
むかし、わたしが日本陸軍の船舶幹部候補生隊に入ったとき、高い指揮台の上に立った部隊長が、2000名の候補生を前に、「諸子は〜、バシイー海峡の〜、埋め立て要員である〜」と叫んだ。「バシイー海峡」は台湾とフィリッピンの間の海峡だ。米国の潜水艦に日本の輸送船団が撃沈された海だ。兵隊を虫けらのように見た部隊長の言葉に、がっかりし、いまもそのどなり声を忘れない。
エスはちがう。虫けらのように、さげすまれ、あんな連中、いなくなったら、世の中せいせいすると、ユダヤの宗教家から見られていた、税金集めの仕事人や、遊女や、罪人を、弟子にしたり、ねんごろに教えた。さらに「はっきり言っておく。徴税人や娼婦たちの方が、あなたたちより先に神の国に入るだろう」(マタイ21・31)とまで言い切られた。
原爆忌が近づく。虫けらのように殺された犠牲者を思う。
「(北王国の)ペカは、ユダで一日のうちに十二万人を打ち殺した。すべて勇士であった」(歴代下28・6)