木を植える

内村鑑三は「われ、明日死ぬと聞かば、今日、木を植えん」と言った。大地に木を植えることは、大事なことだ。どこかの国では、木を一本切ると、木を二本植えねばならぬ法律があるという。近海の魚は山の森で育つと聞いた。
ジャン・ジオノの「木を植えた人」(原みち子訳・こぐま社)は、世界にひろく読まれた作品だ。フランス南部の1200メトル級の荒れた高地に、1人の羊飼が細い鉄棒で地面に穴をあけ、選別したドングリを黙々と埋めてゆく。3年間で10万個を埋め、うち2万が芽を出すが、半分はリスやネズミにかじられる。しかし1万本のカシの木が育つ。羊飼は52歳からこの山に1人住み、人知れず30年あまり、カシや、ブナや、カバの木を植えつづける。ついに見事な大森林が生まれ、水が湧き気候も穏やかになり、人々も住み着く物語。
日本人で、中国のゴビ砂漠に300万本のポプラを植えた人がいる。この話は実在の人物。 NHKの「プロジェクトX」や、TV東京が2008年秋「世界を変えた100人の日本人」で紹介したから、ご存知の方も多いはず。その名は遠山正瑛(せいじょう)。
彼はもともと鳥取大学農学部鳥取砂丘の農地利用の研究をし、初めは不可能と思われた野菜の栽培に成功する。彼が20歳代のころ。その技術と、中国への愛をもって72歳の鳥取大学名誉教授が、生涯をかけてポプラの植林に取り組んだ。
モンゴル自治区では毎年東京都ほどの面積が砂漠化する。反日感情、現地人の無理解の壁を乗り越え、日本人スタッフや、ボランティアが、続々援助にかけつけ、2001年ついに300万本を達成。その日、江沢民国家主席も記念植樹に出席した。
遠山先生は、2004年、98歳で逝去されたが、100年計画という、その志を継いで、うれしいではないか。2009年1月現在、日本人の「緑の協力隊」第168次隊が現地で活動中だ。砂漠に木々が茂り、オアシスができ、ホテルも建っている光景には感動する。
「荒れ野よ、荒れ地よ、喜び躍れ/砂漠よ、喜び、花を咲かせよ/野ばらの花を一面に咲かせよ」(イザヤ35・1)