テポドンは衛星か

「あなたは根拠のないうわさを流してはならない」(旧約聖書出エジプト記23・1)。「流言蜚語(りゅうげん・ひご)」という古い言葉がある。うその情報だ。これは透明性の高い社会では生まれない。たとい流れても、すぐ是正される。独裁政権のもと言論の自由が奪われているとき、まことしやかにささやかれ、真実を知るよしもない民衆は半信半疑のまま、うわさが広まってゆく。
戦争末期の日本陸軍の兵舎で「こんどの2月11日の紀元節には、鉄兜ほどの大きい饅頭が出るそうだ」とうわさが流れ、つばをのんで期待したのに、出るには出たが小さかった。敗戦になると「将校はカルフォルニアに送られて強制労働だ」と聞いて、あわてて脱走した学徒兵がいた。除隊のさいの支給品や手当金ももらわずに。
北朝鮮が、テポドン(大浦洞・発射の地名)2号を打ち上げた。北朝鮮は衛星を軌道に乗せたと国内で宣伝しているが、衛星打ち上げの実績のあるアメリカ、欧州、日本はすべて衛星に失敗したミサイルだと確認。世界中が「違う」というのに、ひとり北朝鮮が「衛星だ」と言い張る。これまでのミサイルも衛星だと、国民にうそをついてきたので、いまさらミサイルとは言えないのだろう。うそで固めた国だ。軍国主義の日本と同じだ。
しかし、北朝鮮独裁政権下、どれほど流言蜚語が横行していることか。世界の経済の構造が壊れてゆくとき、いちばん経済の弱い国の民衆がいちばん苦しむ。国民所得が1人1日1ドルほどの世界最貧国でありながら、巨額の弾道ミサイル開発予算をつかい、強盛国家と胸を張るキム・ジョンイルはわざわいだ。いや、弱い犬ほどよくほえる。
「メネ、メネ、テケル、ウパルシン(数えられた、数えられた、量られた、分裂した)」(旧約聖書・ダニエル書5・25)との予言のように、その政権の終わりは近い。
「メネは数えるということで、すなわち、神はあなたの治世を数えて、それを終わらせられたのです」(ダニエル5・26)