十二使徒群像「旗手・フィリポ」

shirasagikara2010-02-15

十二使徒群像で、フィリポは、いちばんのイケメンに彫れた(写真)。彼は「ΙΧΘΥΣ(イクトウス)の三角旗」の旗手だ。むかし日本陸軍にも、歩兵、騎兵連隊には連隊旗手がいた。天皇から直接さずかる連隊旗をささげ持つ旗手の少尉は、軍の華、名誉の象徴だった。フィリポも、名誉ある「イクトウスの三角旗」の旗手だ。彼の名はギリシア名で、ギリシア語を話すユダヤ人のグループにいたらしい。だからギリシア語の「ΙΧΘΥΣの三角旗」を持つのにいちばんふさわしい。
フィリポはヨハネ福音書で活躍する。まず1章で、イエスから「わたしに従え」と声をかけられ、すぐナタナエルに「すごい方に会った」と興奮して話す。このナタナエルが、十二使徒バルトロマイと考えられるのは、バルトロマイがカナ出身で、「ナザレからメシアが出るものか」と、隣村の悪口を言ったのでもわかる。しかしフィリポは友人を強くイエスに誘う。「ぐだぐだ言わずに、来て、見ろよ」と。この説得力と直感力の鋭さ。
ついで6章で、イエスは彼に、5000人の大群衆のため「どこでパンを買えばよいか」とたずねる。それはフィリポにとり生涯忘れられぬ教育となった。彼は大群衆(大仕事)を見て、とてもだめと答えた。しかし親友のアンデレが、5つのパン、2匹の干魚を差し出し、イエスが給食されたのを目撃した。大仕事も小さいことから崩してゆく手法を学んだのだ。
12章では、ギリシア人が、フィリポを通しイエスに面会を求める。このギリシア人は、エルサレム宗教の堕落を見抜いて、イエスに面会を求めたのでないか。フィリポはアンデレと相談し、ふたりでイエスにとりつぐ。そのとたんイエスは興奮される。「一粒の麦の死」の話。また「いま心騒ぐ」と洩らされる。イエスギリシア人の来訪という、小さな出来事に、大きな十字架の「時のしるし」を読まれたのだ。そしてフィリポも、アンデレも、ギリシア人も消え、イエスおひとりが残る。
14章では、イエスに「フィリポ、こんなに長い間、一緒にいるのに、わたしが分かっていない」と叱られる。叱られたのは、イエスに愛された証拠だ。
フィリポは87歳のとき、いまのトルコで殉教したと伝説は伝える。
「フィリポが言う。『主よ、わたしたちに御父をお示しください。そうすれば満足できます』」(ヨハネ福音書 14・8)