十二使徒群像「下段の五人衆」

shirasagikara2010-02-22

わたしの十二使徒群像は、横からみると三段の滝のように彫った。下段に立つ五人衆は、左からトマス、バルトロマイ小ヤコブ熱心党のシモン、そしてタダイだ。
トマスもヨハネ福音書で活躍する。11章で、イエスとともに死を決意するが、悲壮な殉教型の死はイエスの心ではない。14章では、イエスがどこへ行かれるかわからぬと言って、あの「わたしは道、真理、命」との言葉を引き出す。20章は、復活のイエスを疑い、また信じた有名な場面。伝説では彼はインドで壮麗な王宮を設計完成させ、王の信頼を得て布教に成功したが殉教し、中世の大聖堂建設職人の守護聖人になったという。わたしは彼に曲尺(かねじゃく)を持たせ、また顔は、実証家らしく心もち下むきに。
バルトロマイ、またの名はナタナエル。イエスに「見よ、生粋のイスラエル人、この人にはごまかしがない」(塚本訳)と評価された人物。彼には扱いに困った桜の大コブを削り、子羊にして両手で抱えさせた。彼もインドで伝道し、羊の皮をはぐように生はぎにされて殉教したという。
小ヤコブは、十二弟子の人名表に名をしるすだけで、聖書では無言だ。ガリラヤ湖の漁師のヤコブと区別するため、「アルファイの子」とか、「小ヤコブ」と肩書きがつく。彼には聖霊の剣、それも炎のように曲がり上る剣を握らせた。彼は棍棒で脳天を割られて殉教したという。
つぎは熱心党のシモン。このグループは神政政治を目ざし、ローマと結ぶユダヤの支配階級とも対立した。イエスの弟子はじつに多彩。激烈な前衛党員の彼も聖書では無言だ。群像では、彼の顔は出っ張った小コブを使った。だから前こごみになったので、左の熱心党のシモン、右のタダイが左右からシモンの腕を支える(写真)。
最後はタダイ。マタイ、マルコ福音書ではタダイだが、ルカ福音書使徒言行録では「ヤコブの子ユダ」になる。このユダはあのヨハネ福音書の洗足事件のあと「イスカリオテのユダでないユダ」としてイエスに質問する。なぜご自身を世に現さないのかと(14章)。タダイもシモンもイランで殉教した。
伝説では「五人衆」は壮烈な殉教をとげる。殉教をを持ち上げるのはカトリックの伝承。聖書本文は、十二使徒はいざというとき役立たずで、9人は使徒言行録1章で消える。殉教を無視するこの姿が好き。
「この人が良くなって、皆さんの前に立っているのは、あなたがたが十字架につけて殺し、神が死者の中から復活させられたイエス・キリストの名によるものです」(使徒4・10)