日本の七奪

ことし2010年は、1910年の日本の「韓国併合」からちょうど100年になる、500年つづいた朝鮮王朝を滅ぼし、朝鮮半島を日本の植民地にしたのだ。しかし、それ以前に日本は「韓国軍隊を解散」させ、「外交権を剥奪」し、「財政をおさえた」うえでの併合であったことを、ほとんどの日本人は知らない。しかし韓国も北朝鮮も、日本が19世紀末から、いかに土足で半島に踏みこんできたかを全国民が教えられ語り継いでいる。
「日本の七奪」ということばもある。「七奪」とは、36年間の植民地支配下で、日本は「王」を奪い、「国家」を奪い、「土地」を奪い、「米穀」を奪い、「姓名」を奪い、「ことば・ハングル」を奪い、「いのち」を奪った、ことを指す。
いまの日本は「韓流ブーム」で、テレビなどでも韓国ドラマが大はやりだ。日本と韓国が仲よくやっているのはうれしいが、過去の歴史で、朝鮮半島の人々全部が知っている日本のふるまいを、日本人のほとんどが知らない、その「国民的常識の落差」は深刻だ。
韓国人は、それを「知っていて」、ふだんは「気にしない」大人の態度をとっている。しかし、それを「知らない、無知な」日本の政治家が、不用意な発言をすると、当然ながら、韓国民も北朝鮮も、顔を逆なぜされたようにいきりたつ。
たとえば、「拉致問題」ひとつを考えても、日本人は北朝鮮の非道を訴えるが、「日本の七奪」の最後の「いのちを奪った」の「日本による朝鮮人拉致事件」をよく知っての批判なのか。第二次世界大戦中の「朝鮮人徴兵」「朝鮮人労働者の強制連行」「朝鮮女性の慰安婦」などで、おびただしい朝鮮人が拉致されたことを知った上での発言であってほしい。
新約聖書の神さまは、人間のそむきを「知って」「気づいて」いながら「気にしない」態度をとられた。それはゆるしだ。韓国も北朝鮮も「日本の朝鮮人拉致」を知っていながら、心の底にたたんで、ふだん、あらわには「気にしない」大人の態度をとっている。日本人は、彼らが心の底にたたんでいることを「気にする能力」を持つべきではないか。
「もはや彼らの罪と不法を思い出しはしない」(「ヘブル人への手紙」10・17)

<「日本の七奪」の(注)>
③<土地を奪い>は、日本の朝鮮総督府韓国併合後、10年間つづけた土地調査事業で、田畑の所有権を登記させたさい、字の読めない農夫が期日までに登記できず土地の所有権を失い、日本人地主や、総督府、東洋拓殖会社などの所有になった。土地を失った農民は、北朝鮮からとなりの満州へ逃れ、南朝鮮から多く日本へ渡航した。在日朝鮮人の激増と土地調査事業は深いかかわりがある。
④<米穀を奪い>は、総督府が朝鮮で米の増産を奨励し、その米を日本へ「移出」させ、朝鮮へは、満州から粟(あわ)や、稗(ひえ)を「移出」して、これを食べさせたこと。
⑤<姓名を奪い>は、儒教が国教であった朝鮮では、「族譜」が尊重され、家系が重んじらることは日本と比較できない。それを韓国人の「姓名」を廃し、金(キム)や、李(イ)姓を、日本姓に強制した。なかには激怒して憤死した名家もあった。
⑥<ことば・ハングル>を奪いは、世界で唯一、国王(世宗大王)が発議し学者が考案してうまれた表音文字「ハングル」(偉大な、大きな文字の意)は、1446年旧暦9 月10日に発布され、朝鮮人の誇りであった。それを総督府は学校教育で廃止し、出版物での使用も禁じた。現在、韓国では10月9日を「ハングルの日」として祝う。