国土の四隅に小穴をあける北朝鮮

北朝鮮キム・ジョンイル金正日)総書記が五月三日〜七日、四年ぶりに中国を訪問した。世界で中国しかたよれる国がないからだ。
一九九〇年以降、ソ連をはじめ東欧社会主義国が崩壊しその援助がとだえた。一九九五年には国土の七五%が自然災害をうけ、一九九八年まで餓死者数百万人を出す「苦難の行軍」(労働新聞社説)をつづけた。
二〇〇二年の「七・一措置」で市場経済へ小穴をあける政策に転じた。そのひとつが、首都から遠い、国土の四隅にあけた「外資誘導」の小穴だ。
西北の角は「新義州」。東北の角は「羅先」。西南の角は「開城」。東南の角は「金剛山」だ。しかし中国の華僑を頼った「新義州」は頓挫。「羅先」の経済貿易特区も竜頭蛇尾。韓国企業による「開城」工業団地と、「金剛山」観光は一応進展したが、これまた中断。八方ふさがりだ。
しかも市場経済であいた穴で、商売でもうけた連中と庶民の格差が拡大、インフレは高騰。そこで二〇〇九年、デノミで通貨を一〇〇分の一に切り下げ、たんす預金を没収したが経済は大混乱。それに六者協議も、核開発も、拉致問題も「だんまり」の「ごね得」をきめこみ、西側世界から総スカン。やむなくキム・ジョンイルのおでましとなったのだ 。
食料不足、燃料不足に、医療は崩壊。こんな悪政によく人民がついてゆくと驚くが、ひとつは朝鮮民族は誇り高く貧しくとも耐えるねばりがある。いまの独裁体制は、薄給で黙々と働く官僚組織に支えられ、「先軍政治」と称して労働党共産党)の指示を無条件に実行する軍隊がいる。その軍を偶像化したキム・ジョンイルが抑え、国民相互監視システムを整え、少数のエリート官僚が「アメとムチ」で人民をコントロールして、国家転覆をからくもふせいでいる構図だ。
日本の統治時代、ピョンヤン平壌)は「朝鮮のエルサレム」といわれた。それほどクリスチャンが多く、長老教会を中心に日本の神社参拝に一番つよく抵抗した。南北分断後、おおくのクリスチャンは南へ逃げた。「共産政権下の六〇年」でも、日本の「隠れキリシタン 二〇〇年」のように、その信仰は「苦難の行軍」をつづけているにちがいない。ソ連や東欧教会もそうだった。福音はしぶとい。「忍び抜いた人たちはさいわいである」(ヤコブ5・11)