ユグノーのように正直な

ユグノーのように正直な」ということわざがイギリスにあることを、須永隆著「プロテスタント亡命難民の経済史ー近世イングランドと外国人移民」(2010年刊、昭和堂)で初めて知った。
ユグノーは、16世紀のルターの宗教改革後、フランスに生まれたプロテスタントだ。カトリック教徒に迫害され、多くが国外にのがれた。そのユグノーには元修道士や商工業者が多かった。つまり手に職を持つ人々だ。そのころ産業面ではヨーロッパの後進国だったイングランドは、優秀な職人でもあるユグノーを多数受け入れ、18世紀の産業革命、19世紀の世界制覇へとつなげたという。
そのイギリスでクエーカーがうまれた。クエーカーも正直の代名詞になった。うそ、はったりのない、正直のかたまりの評判を得た。ウエーバーのいう「プロテスタンティズムの倫理」だ。
しかし日本にも儒教倫理がある。いまNHKで放映中の「龍馬伝」で、幕末の志士・坂本龍馬がいる大阪へ、土佐から5両の金が送られる。「水戸黄門」のテレビでも、ときどき国許から金の送金を旅先で受ける。送金は、人々が正直で、信用がなければ成り立たない。韓国で、ある実業家から「世界と商売をして、いちばん正直なのは日本人だった」と言われたことがある。
鳩山政権が国民の信頼をなくして6月4日に総辞職、菅総理と交代した。普天間基地移設で、言ったことと、やったことが食い違った。しかし、政権交代後の民主党のすべてがだめなのではない。評価すべき点もある。昨2009年9月7日の月曜ブログ「新人を育てる」で、わたしはこう書いた。
「政権をとったものの、これからの民主党はよちよち歩きで、おぼつかないことだろう。しかし少なくとも2年は、民主党の成長を見守ることが大事だ」「古い伝統のあるキリスト教会では『若い牧師を育てる』という気風がある。だれしも最初から上手に話せないし、書けない。いま大牧師になっている先生がたも、みなそうだ」「選挙で政権をひっくり返した民主党を、しばらく揚げ足取りをせずに育てるのが国民の責務だ」「牧師にしろ、会社員にしろ、そして政党にしろ、新人を育てるには忍耐と、愛情と、厳しさが大事だ」。
いま改めてそれを思う。そして正直な政治が人々を元気にさせる。日本も英国も。
「私はキリストにあって真実を言い、偽りを言いません」(ローマ9・1)