「万年筆」と「バイブル」

shirasagikara2010-09-27

ドイツの「モンブラン」製の万年筆を多年愛用している。もう35年もまえ、わたしが国立国会図書館を辞めて伝道者になったとき、そこの聖書研究会の重鎮・吉田正夫さんから贈られた。極太(ごくぶと)で書きやすい。いただいたあと、伊勢丹デパートで同じものを見つけ、10万円の値段に仰天した。キャップにはスイス・アルプスの最高峰、モンブランの氷河を表した6角形の「ホワイトスター」 がつき、14金のペン先には「4810」と、モンブランの標高が彫られている。ペンの背中には「藤尾正人」の刻印。それに極太の万年筆を大砲に見立てた大砲発射台のペン置きまでついている。その両輪には「MONT BLANC」の文字。(写真)。
それにしても「万年筆」とはよく名づけたものだ。35年使いこんで、いよいよ手になじんできた。太いペン先は、しなやかで、弾力があり、書きようで、太くも、細くも、すらすら書ける。30年まえは、これで原稿用紙に書きなぐったが、そのうち、原稿もワープロになり、パソコンをたたくようになった。しかし、手紙、葉書は、がんとして「モンブラン」だ。

モンブラン」がアルプスの最高峰なら、「聖書」は書物の最高峰だ。聖書のことを「バイブル」というが、これはギリシア語の「ビブロス=書物」が語源。それが「書物の中の書物」になったのには、わけがある。その聖書は、もともとギリシア語や、ヘブル語で書かれ、ラテン語に訳されても、ふつうの信徒には読めなかった。それが500年まえ活版印刷がドイツで発明され、おりしもルーテルの宗教改革がぼっ発し、聖書の翻訳が各地で起こり、神父や修道士だけでなく、一般信徒も聖書を自国語で読めるようになって聖書愛読が始まった。あまり聖書の福音がありがたいので、ただの「ビブロス=書物」が、「バイブル=聖なる書物」となった。
出版されて、わっと売れるのは「ベストセラー」。しかし多くは数年で息切れ。ところが何十年も読まれのが「ロングセラー」。さらに読まれて「古典」となる。聖書はいまもくりかえし現代語に翻訳され、何百年も世界で愛読される書物のロングセラーの最高峰だ。
「望む者は、ただで、いのちの水をうけよ」(黙示録22・17、塚本虎二訳)