韓国の「ムグンファ」と日本の「ムクゲ」(槿)

shirasagikara2012-07-16

ことしも庭の槿が咲きました。花は下から咲いてゆき、一日でしぼみます。
「無窮花と隣国でよぶ白き花 槿と咲きぬ日本の庭に」(正人)
桜の花が日本の象徴のように、ムグンファ(無窮花・槿)は韓国の国花です。硬貨にも彫られ、韓国の特急列車や通信衛星の愛称も無窮花です。
ところが日本が朝鮮半島を植民地にした一九一〇〜一九四五年の末期、朝鮮総督府はこの無窮花を目の敵にしました。しぼんだかと思うとまた咲きつづける無窮花を、つぶしても、つぶしても沸き起こる反日抵抗運動のシンボルとみたのです。児童文集の表紙に無窮花のカットを載せて逮捕された教師もいました。
一九四五年八月、日本が世界大戦に敗北し朝鮮が解放されると、人々は大喜びして無窮花を植えたのです。日本の支配下では、塀より低く無窮花の枝を切っていたからです。いまは白いウエディングドレスに、朝鮮半島の地図を真珠でふちどり、その上いちめんにピンクの無窮花をちりばめたデザインもあります。
韓国では無窮花が咲きつづける「無窮」に力点をおいて、「粘り強い花」として国花となりましたが、日本では、咲いてもすぐしぼむ「はかない花」に注目するのです。日本のことわざでは「槿花(キンカ)一朝の夢」「槿花一日の栄」と、ムクゲはつかのまの栄光と見ます。なぜでしょう。
日本では毎年二〇に余る台風が襲来し、年中地震があり人が死にます。「この世は移りゆくもの」という人生観、世界観が出来上がったからです。諸外国とは異質の自然災害を生きてきた日本人の感性です。だから一日で咲きしぼむ底紅槿は、茶道裏千家の宗旦槿と呼ばれる侘び寂びの茶花になりました。花一つでも隣りあわせの国でこんなに見方がちがうのです。
聖書は「草は枯れ、花はしぼむ」と嘆きつつ、「神のことばはとこしえ立つ」と力強い(イザヤ四〇・八)。しかしまた「ヤコブの手紙」では「草は枯れ花は散り、その美しさはうせる」(一・一一)と、日本人と同じ見方にも立ちます。「ムグンファ」。いい響きだ。「人の生涯は草のよう。野の花のように咲く。風がその上に吹けば、消えうせ」(詩篇103・15)<写真は庭の槿>