石原東京都知事辞任・右にぶれる日本

shirasagikara2012-10-29

2012年10月25日、突然、石原慎太郎東京都知事(80歳)が辞任を表明。国政復帰をめざし新党の党首になると公言した。これで日本の政治は、さきの自民党総裁安倍晋三が就いたのとあわせて右へぶれる。
石原慎太郎、人騒がせな人物だ。もちろん都知事として、トラックのディーゼル車規制など功績もあるが、右寄りの発言で内外に要らざる波紋を起こした。
1937(昭和12)年12月、日本軍の中国首都・南京占領時の「虐殺事件はなかった」「本多勝一ってバカがいたんだ」と発言して中国の猛反発を招いた。いま中国と深刻な緊張を生んでいる「尖閣諸島」問題も、彼が東京都で買いとり、船泊まりをつくると言い出したのが事の発端だ。政府はあわてて国有に舵を切り、中国から泥棒よばわりされている。
南京虐殺といい、尖閣問題といい、歴史認識の浅さが根にある。南京虐殺は当時ホンコンを通じ発信され世界中が知っていた。「知らぬは日本人ばかりなり」で、それを公務出張中の松前重義(のち東海大学創立者)が写真入りの記事を読んで驚き、信仰の友人の政池仁に語った。政池はそれをキリスト教の集会で「日本軍は皇軍ではない、虐殺、強姦のひどい軍隊だ」と話したが、だれも信じなかったという。報道管制されていたからだ。
尖閣諸島も、日本は明治維新琉球王朝をつぶし沖縄県をつくったあと、尖閣諸島無人島で人が住んだ形跡がなく、1885(明治18)年に日本領にしたと主張するが、中国の文献には、明国の倭寇討伐総督に任命された胡宗憲が、1556年(日本の弘治2年、毛利元就が活躍した時代)に編纂した「籌海図編」に、尖閣諸島(中国名で釣魚島)を中国福建省海防区域にしるしている(孫崎享尖閣問題 日本の誤解」<「世界」11月号>)。だから日本は泥棒よばわりされるのだ。
さらに公立学校の「日の丸、君が代」問題で処分される東京都の教職員の数は、全国の6割でダントツに多い。これも石原都知事の方針だ。石原都知事がいなくなってせいせいするが、彼が吹きつけた息は、ながく都政に黒い煤煙をたなびかせるだろう。「残る煙がね〜、癪の〜種、断腸ね」。
「日を重ねれば賢くなるというのではなく、老人になればふさわしい分別ができるのでもない」(ヨブ記 32・9 )<写真は庭に散る金木犀