くさいクリスマス

shirasagikara2012-12-24

あなたは馬小屋に入ったことがありますか。そこは馬が落とす糞尿の、むっとするくさい臭いがただようところです。ふつう馬小屋には数頭の馬がそれぞれの囲いに入れられ、お尻をこちらに向けて立ち、壁につるされた飼い葉桶の餌を立ったまま食べます。日に3回餌を入れ、3回は連れ出して水を飲ませ、毎日下草を替えます。馬は立ったまま糞を落とし、尿(いばり)を放つからです。
エスさまは、馬小屋でお生まれになったといわれます。聖書には馬小屋とは書かれていませんが、「ルカ福音書」2章には、3回「飼い葉桶」が出てくるので馬小屋とわかるのです。マリアさんは、おそらく馬1頭分の狭い囲いの中に敷かれた下草に横たわり、長旅の疲れと、むっとするくさい臭いにむせて、急に産気づいて出産されたのではないでしょうか。両側に立つ馬のおなかが見える低さの地面でした。馬はやさしい目をしています。柱に掛けられたにぶい明かりが、ぼんやりマリアさんやヨセフさんの出産を照らすなか、イエスさまの誕生をだれよりも早く、やさしく見つめたのは馬さんたちでした。イエスさまの誕生は、くさくて、汚くて、いちばん低い場所での出来事だったのです。
これを最初に知らされたのは、王宮の王さまでも神殿の偉い祭司や学者でもなく、身分の低い、裁判の証人にもなれなかった、夜間労働者の羊飼いたちでした。しかも天使から「(馬が餌をたべるきたない)飼い葉桶に、(ふつうの)布にくるまれ、(一握りでにぎりつぶせる弱々しい)乳飲み子が寝ている、それがメシア・救い主の印・証拠だ」と告げられたのです。なんという頼りない証拠でしょう。「黄金のベッドに絹にくるまれた赤子」というならまだしも、最低のくさく汚い場所で、しかもユダヤの偉い人たちから見れば「どこの馬の骨ともわからぬ」マリアという小娘が、救い主を産んだとは、とうてい信じられない出来事でした。
しかし、この頼りない印を信じ切るとき、世界の底の底にいるものをも、すべて救い上げる力のある、救い主・イエス・キリストがたち上がられるのです。くさくて汚くて低い誕生にこそ力があったのです。「くさいクリスマス」、だからありがたいのです。
「聞いた者は皆、羊飼いたちの話を不思議に思った」(ルカ2・18) <写真は庭の万両。なお「インターネット聖書ばなし2012年」にも、もう少し詳しく「くさいクリスマス」を掲載>