「愛称」「敬称」「尊称」

shirasagikara2014-10-13

日本には「世界でも珍しい驚くべき風習」があります。なんでもかんでも、物でも人でも「愛称」「敬称」でよぶことです。また目上の方への「尊称」も忘れません。
まずは「ちゃん」づけの「愛称」です。「あかちゃん」「坊ちゃん」「お孃ちゃん」、「父ちゃん」「母ちゃん」「お姉ちゃん」、「ばあちゃん」「じいちゃん」「叔父・叔母ちゃん」。いま流行の各地のシンボル「ゆるキャラ」でも、群馬県は「ぐんまちゃん」、わたしの住む西武線鷺宮の隣り駅の都立家政は「カセイちゃん」といったぐあい。
また「さん」づけの「敬称」もさかんです。
水戸黄門の「助さん、角さん」に始まり、「おかみさん」に「おふくろさん」、「お医者さん」に「弁護士さん」、「パン屋さん」に「ケーキ屋さん」、「三越さん」に「大丸さん」、「もしもしカメさん、ウサギさん」。
名前を呼び捨てるのが親密さのあらわれの英語圏でも、「ジョン」は「ジョニー」「レベッカ」は「ベッキー」と「愛称」で呼びますが、物や職名にはつけません。「花屋さん」は「フラワーショップ」です。韓国でも「イエスニム(さま)」「ソンセンニム(先生さま)」と人には尊称をつけますが、「薬局」は「ヤックク」で「薬屋さん」とはいいません。
さらに戦う敵方の武将でも「織田殿」「武田殿」と「敬称」をつけ、敬意をあらわすのです。また目上の方には「さま」とか「先生」の「尊称」をつけて「お坊さま」「神父さま」「ダンナさま」「奥さま」と「様」づけになります。
こういう柔らかく優しいことばの、永く深い伝統のある日本で、牧師や神学者が、イエスさまのことを「彼が」と話されるのを聞くと「おやっ」とおもいます。「彼」は、対等か、目下の人物を差すことばです。
というのは、国立ハンセン病療養所の教会で、患者さんから「牧師先生が『イエスは』『彼が』といわれるより、『イエスさまが』『主さまが』と話してくださるほうがうれしいです」と言われたからです。自分を低い位置におくと、自然に「イエスさま」の「尊称」が出てくるのでしょう。 「(ハンセン病者が叫びます)イエスさま!(イエスーエピスタタ!)どうか憐れんでください」(ルカ一七・一三)<写真はつくばいで水を飲む飼い犬・クーちゃん>