引越し民族・賢いユダヤ人

shirasagikara2014-10-20

「しょっちゅう引越しをしていたから、ユダヤ民族は賢くなった」と、ユダヤ系女性と結婚した友人から聞きました。
ユダヤは、紀元七〇年にローマ帝国により滅ぼされてから、世界中に離散(ディアスポラ)しました。自分たちを守ってくれる政府も軍隊もありません。しかしユダヤ人は国境を越えて連絡しあい、情報のネットワークをつくったのです。
どの地方で、どの物資が不足し、どこで、その物資が余っているかが、すぐわかりました。それを流通ルートに乗せて運べば大もうけできました。政府をもたないユダヤ人が豊かになりました。そのときユダヤ人の独自性を支えたのが旧約聖書の「律法」と「割礼」でした。
その土地の者でないユダヤ人が金持ちでいるのは、土地の貧乏人には面白くありません。それにキリスト教がひろまった西欧諸国では、ユダヤ人はキリストさまを十字架につけて「その血の責任はわれわれと子孫にある」(マタイ二七・二五)と叫んだキリスト殺しの子孫なのです。
こうしてユダヤ人への反感、偏見が西欧諸国でうまれます。しかし年中、ユダヤ人が迫害されたわけではありませんが、何かことが起こると、思い出したように迫害されます(シーセル・ロス「ユダヤ人の歴史」安積鋭二訳・みすず書房)。
つまりユダヤ人は、いつ追い出されるかわからぬ緊張感のなかで生活しました。いざというときすぐ逃げ出さねばならないので、「大事な物」と「不要な物」をいつも区別するようになります。
そのとき、小さく価値のある物が貴重です。ピアノはかついで逃げられませんが、バイオリンなら抱えて走れます。ユダヤ人にはピアニストより、バイオリニストが多いといわれるわけもわかります。とくに集中したのが、小さくても高価な「金」と「ダイヤ」です。だから二一世紀でも金融資本とダイヤ市場はユダヤ人が力を持っています。
いつも「大事な物」と「不要な物」を選別した「引越し民族」のユダヤ人が賢くなりました。イエスさまも「必要なものは多くはない、いや一つだけだ」とマルタをさとされます(ルカ一〇・四二)。九〇歳近い老人、身の回りを見わたし、いかに不用品が多く、選別できていないわが身の「愚かさ」を恥じています。「マルタ、マルタ、あなたは多くのことに思い悩み、心を乱している」(ルカ一〇・四一)
<写真は落葉「朝の庭マナと散り来る落葉かな」>