四谷の鯛焼屋と老舗教会

shirasagikara2015-06-15

この暑いのに四谷で「若葉」の鯛焼きを買いました。四谷で降りると寄りたくなる店です。ここは人形町麻布十番とならび「東京三大鯛焼屋」の筆頭として有名です。
「若葉」は店の宣伝をしません。店の前の看板以外案内板もありません。四谷駅から広い新宿通りを新宿方向に歩いて左側二つ目の角を左折し、狭い道の奥の右に小さな店があります。しかもここだけで売り百貨店などには出しません。しかしこの店は行列の出る店なのです。
前週の6月5日のブログで「駆け集まる集会」と「かき集める集会」を書きました。偉い先生や、有名な大店(おおだな)に人々が駆け集まるのならわかりますが、なぜ横丁の小さい鯛焼き屋にもお客がならぶのでしょう。しかも数十年。
「若葉」の狭い作業場には職人が二人立ち、長い鉄製のたい焼き器をあやつって、パパン、パパンとふたを閉めたり、カタカタカタと火の上を回したあと、焼きあがると窓ぎわの動くベルトへ落とします。端でストンと落ちると、軍手をした女性がはさみで鯛焼きの周りのムダを切ってゆきます。だから出来る鯛焼きの数は知れたもの。おかげで行列となるわけです。
そこでわかりました。「若葉」が老舗(しにせ)になったわけが。第1に創業以来65年変わらぬ味を深化させつつノウハウを守り、しっぽまであんこがしっかり入った「商品に自信と誇り」を持っています。第2に食べ物は新鮮が命ですが「出来立ての熱々」を1個150円で売っています。第3に「期待」を持たせています。うまいと聞きつけてわざわざ訪ねてくる。行列して鯛焼き制作工程をじっと見る。そしてやっとありつけた鯛焼きのぷ〜んと香る強烈なにおいに、また食べたくなる期待です。
東京に多い横丁裏通りのキリスト教会も、少数精鋭の老舗教会になればいいのです。第1に2000年変わらぬ「福音の味と香りに自信と誇り」を持ち、第2に「古い聖書に新鮮な話題」を織り込んだ、これはおいしいという福音が語られ、第3に人々が「またあの福音を聞きたい」という期待を持って裏道の教会を訪ねてゆく。そのとき小教会が老舗になり、黙っていても人が集まる教会になります。
1948年、わたしたちが鷺宮裏路横丁の酒枝義旗先生ご自宅の聖書集会に駆け集まったとき、この3条件がそろっていました。
「あなたがたは、主が恵み深いかただということを味わいました」(1ペトロ2・3)<写真は「四谷の鯛焼き」正人画>