「ローマ・カタコンベ新聞」紀元58年〇月〇日号

shirasagikara2015-09-25

「昨夜、カタコンベ(地下墓地)でうれしい集会があった」「使徒パウロから、わがローマ教会にあてた長文の手紙を、ギリシアのケンクレア教会女性世話役フェベがたずさえて来て、その第1回の朗読会がひらかれたのだ」。
「夜ぞくぞくと集まった会衆は、老若男女や身分の上下なく交じり合い、まず愛餐会が始まった。貴婦人たちはたくさんの夜食を運びこませ、奴隷たちも喜んで食べた」「そのうち、だれかが讃美歌を歌いだすとみなが唱和し、歌声はカタコンベの奥までこだました」。
「葬りの儀式を行う広間の岩の上で、パウロの同労者・女性長老プリスカが祈ったあと、フェベが立ち、燭台の光にパウロの手紙をかざしながら朗読を始めた」「一語、一句、明瞭に、大声で読みあげた」
「その最初の一句にどよめきが起こった」「パウロス ドウロス クリスツウ イエスパウロは奴隷 キリスト・イエスの)で手紙が始まったからだ。会衆にはローマ帝国に奴隷にされた者がたくさんいるのだ」。
「フェベが手紙を読み進める」「パウロは人間はダメだ、おれは大丈夫という人間もダメだという」「そのダメ人間を<キリストのまこと>が救う」「無罪のイエスの死で、有罪のわれらが無罪判決を受けた」「だから大波にもまれても平安を与えられ」「すべてのことが善に替わり」「ローマ帝国の権力への対応も、キリストに救われた喜びで対応する」。
「フェベの朗読は1時間すぎても終わらない。なかには聞き疲れて居眠りする者もかなりいた。それが、がぜん目をさましたのは、朗読も終わりに近づいたときだ」「聞き手自身の名前が出てきて驚いたのだ」「パウロプリスカを始め、ローマ教会の主要信徒の名前27人を挙げ、その半分の14人は奴隷だった」「しかも『愛する』『わたしの協力者』『主に結ばれた』と、美しい冠をかぶせて名を呼び『アスパサッセ(よろしく)』と一人ひとりに声をかける」「奴隷たちから押し殺した喜びの声がもれた」。
「フェベが手紙の最後の『ヘ ドクサ アイス ツウス アイオーナス(栄光 世々限りなくあるように)アーメン』と結んだとき、大拍手がおこり、讃美の声がカタコンベをゆるがした」「第2回の朗読会も予定され、この手紙の写本作業はすでに始まっている」。
「神は、わたしの福音すなわちイエス・キリストについての宣教によって、あなたがたを強くすることがおできになります」(ローマ15・25)<写真は金モクセイの花>