宮廷料理と日本の公家さん

いまNHKで二度目の放送をしている韓国ドラマ「長今(チャングム)」で、韓国の宮廷料理には目を見張る。日本は平安以来1000年の宮廷の歴史があるのに、イギリスとともに宮廷料理がない国だ。
日本の宮廷は文学には優れたが、料理は大名や武士とともに質素だった。さらに茶道の侘び寂びの影響で、日本料理は簡素を尊ぶ。じつは明治17(1884)年に華族制度ができて、やっとお公家さんは息吹き返したほど貧しかった。宮廷料理どころでなかったのだ。
それまでは、公家筆頭の九条家の禄高は3043石。鷹司家は1500石。二条家は1708石。近衛家は2860石。一条家は2044石。三条家は472石。岩倉家は150石。ここまでの7家が「公爵」で、小藩の家老にも及ばぬ低収入。「侯爵」になると、醍醐家が312石8斗。徳大寺家が410石。西園寺家が597石。もう下級武士の禄高だ。
伯爵以下はもっと惨めだ。伯爵の甘露寺家・200石。清閑寺家・180石。子爵の北小路家・30石3人扶持。武者小路家・130石。分家の男爵では50石、30石もざらだ。これでは日々の食事にもこと欠くしまつだ(貴族院華族授爵表」)。
しかし美食、飽食がいいのではない。イエスは「何を食べようかと思いわずらうな」と教える。いまの日本。テレビも料理番組はいいが、グルメ番組が過ぎてはいないか。
「平穏であって、ひとかたまりのかわいたパンのあるのは、争いがあって、食物の豊かな家にまさる」(箴言17・1)